私も医者ですが、本書は人にはお薦めできません。
まず「死亡診断書を書いたことがないのが誇り」だそうですが、何も癌の再発がなくても人は必ず死にます。自分の患者の死に立ち会ったことがないということは、一人の患者を最期まで自分で診ていないということであって、医者としては別に褒められることではありません。
それに、救急やターミナルケアを盛んにやってる病院に勤めたことがあれば、どんな名医であっても死亡診断書を書かずにすますことは不可能です。そういう修羅場を経験せず内視鏡だけやって、たまたま見つかった進行癌の患者は部下や内科医に押しつければ、そりゃ死亡診断書を書かなくてもすむでしょう。
また、ミラクル・エンザイムは著者の仮説に過ぎません。多くの医者はそのようなものの存在を信じてはいません。なのに、これの存在を前提にどんどん話が進みます。仮説というものは使う前に、まず言い出した人が、その仮説が正しいことを証明するのが当然です。このような、ある説が科学的であるために必要な当たり前の手続きが、本書では一切踏まれていません。
本書に書かれていることが全部間違いというわけではありません。予防医学や生活習慣の改善が大切とか煙草は悪いとかいうことは、多くの医者も同意するでしょう。こういう正しいことも混じっているから、かえって信じやすいのかもしれません。
また著者は、大腸内視鏡に関しては優れた業績がある人です。その点は多くの医者も否定はしないでしょう。しかし、健康に関する正しい知識を人々に提供するのも医者の仕事なのに、過去の業績を利用して企業とつるんで、人々を騙して金儲けしようとは……開いた口が塞がりません。