いかにもラノベっぽいので警戒していたが、どううてどうして良質なジュヴナイルだった。
舞台は架空の惑星上に構築された大陸鉄道網……なんだけど、これは単に物語をうまく進めるための適切な配置をした鉄道網が欲しかっただけで、その上で暮らす人々や文明、文化はほぼ地球の19世紀のまま。雰囲気を出すためか、度量衡までヤード・ポンド法を使うわ、登場する国々が実際の地球上のどの国をモデルにしているのかもだいたい見当が付くようになっている。なんというご都合主義!
でもまぁ、ジュヴナイルはこれくらいご都合主義なストーリーでいいのだ。登場する少年少女たちが、大人の社会に翻弄されながらも成長していくという王道はきちんと守られているわけだし。
それよりも、そういう「成長物語」に必要以上に紙数を投入しないのが、この作品の良い点だ。内面の話は最小限にとどめて、むしろ物語をがしがし駆動する方を重視している。スピード感が実にいい。シーンが一度たりともレールの上から外れないのもあっぱれだ。まさに暴走特急。
鉄分の濃い人には特に楽しめると思うが、そうでない人にも十分に楽しめるのが、小川作品のいいところ。