主人公が四国へ帰郷のため飛行機へ乗ろうとしたら、数十年前にタイム・スリップしてしまった...。作者得意のSF的設定を土台としたロジカル・ミステリと思いきや、本作は趣きが異なる。SFと言うよりは幻想小説である。
主人公は"異邦人"として数十年前の故郷に戻る。しかも、父が何者かに殺される数日前に。あからさまには書かれていないが、主人公と父との間には何らかの確執があった事が示唆される。父の命を救おうと主人公は必死の努力をする...。
遂には父との和解(=fusion)を果たす主人公。何か「暗夜行路」を思わせる主題だが、冒頭にも述べたように幻想的な雰囲気の中で物語が進行するので、押し付けがまさは感じない。
父との確執というのは、作者の実体験なのかもしれない。幻想的ストーリーが、逆に妙なリアリティを感じさせる異色作。