自身が異色の民俗学者である礫川氏が、柳田国男と初期柳田民俗学の流れをくむ異端の民俗学者たちについてまとめた本。1章が1人にあてられており、礫川民俗学の現時点での集大成ともいえる本である。
全体的に、著者の今までの著作の要約になっている感は否めず、例えば福沢諭吉であれば『知られざる福沢諭吉』、三角寛であれば『サンカと三角寛』をそれぞれ一読することをお奨めする。
そのうえで、個人的には柳田国男(序章)と三角寛(終章)を興味深く読んだ。
柳田の山人論を理解するキーワードとして、著者は「隘勇線」という言葉に注目する。これは、植民地・台湾の統治用語で帰順した部族と敵対する部族との境界線を指すことばであった。
柳田は日本本土にも隘勇線概念を援用して、人里と異境との境界の向こう側には今もなお、先住民族の末裔たる山人や漂白民・サンカが生息していると考えた。
それは、いうなれば日本国民が共有していたある種の共同幻想だったのだが。
外国からの圧力によって、急速に近代国家となった日本では、容れ物こそネイションと言えるものが整ったが、そこに入る中身--国民は旧来の文化を引きずらざるを得なかった。そこに、共同幻想が入りこむ余地があった。
一方、現代に生きる我々が共同幻想に惹かれる理由は何なのだろう。あまりにクリーンで安定した現代に生きるからこそ、自らのルーツを探し、生きる指針としたいからだろうか。