グラハム・ハンコックが好きで手に取った。
著者はムーやアトランティスなどといった超古代文明の主張者で考古学ミステリーファンには「神々の指紋」が有名だが、ジャーナリストらしい広範な文献調査と現地踏査による膨大な証拠集め、仮説を検証する緻密な論理展開が売りで、単なる神秘主義的なオカルトとは一線を画している。
今回のテーマはところが考古学的ミステリーの謎解きではない。古今東西ありとあらゆる不思議をすべて包含してしまう、壮大な、いわば「人類の存在そのもの」の謎解きである。
たとえば宇宙人による誘拐事件。たとえば妖精、聖霊との出会い。たとえば臨死体験。これらはすべて「変性意識」が異次元にアクセスすることによって起きている現象だという。「変性意識」とは平たくいえば、麻薬などの幻覚物質などによって脳がトリップした状態のことである。不思議なのは、トリップしたときに見る「幻覚」が、3万5千年前の壁画に描かれたものと、現代における科学的実験で報告されたものとが共通していること。全身に針を刺された人、半人半獣の動物、灰色の小人、螺旋状にからまる二匹のヘビなど、洋の東西を問わず、歴史上のどの時点においても、幻覚の内容が類似している。これはなぜか。
著者は、それが脳が作り出した「幻覚」ではなく、現実にそこに「それ」が実在するからだ、という。テレビのチャンネルを変えると別の番組が現れるがごとく、幻覚性物質によって脳のチューニングが変わると普段は見えない別の世界を「見る」ことができる。脳の中にはもともとDMT(ジメチルトリプタミン)という幻覚性の物質があって、科学的にいえばこれが「変性意識」への移行に関わっている。生まれつきこのDMT量が多い人が2%ほどいて、こういう人はいわゆる霊感が強い=霊を見やすいという。
本書は、いわゆる霊的の世界の実在について、直接的ではないにしろ、たくさんの傍証を集めて仮説を構築した。本書では言及はないが、前世の記憶とか、予知夢とか、自動書記とか、なにしろこの仮説で説明のつく「不思議」はものすごく多い。あとは、決定的な証拠、だけである。
ともあれ面白い。考古学ミステリーのファンだけでなく、脳科学に興味のある方にもぜひお勧めしたい。世界観が変わるかもしれない。