主に路地(被差別部落)をテーマに執筆活動を行って来た著者。
前著『
日本の路地を旅する』は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、次回作が待たれていたところ、
路地の次へ、著者の歩みがはじまったようだ。
本書に登場する異形の日本人のうち、直接の路地出身者は終章の桂春団治のみ。
関係があるとすれば漫画『血だるま剣法』の作者平田弘史で、本人は差別に立ち向かう漫画を書いたつもりが、
部落解放同盟から糾弾を受け絶版となるという皮肉を、著者は共感を持ってレポートする。
著者は無理に「差別」を論じることはない。
登場人物は皆学校で習うものとは少し違う論理に従い世を生きてきたために、差別的な世間の視線に晒されながら生きてきた。
本人は、無理に世間と折り合いをつけようとはしないけれど、肩肘はって世間と闘おうとも思っていない。
静かに、自分の職業に忠実に生きている。
そんな彼らの論理を、同じく声高な主義主張とは無縁に、静かにレポートする。
同時期に『
畸人巡礼 怪人礼讃 (新 忘れられた日本人'U)』を出した佐野眞一よりも上原隆のルポような、さわやかで軽快な読後感が残るのは、著者の世代もあるだろうし、
路地からスタートしながら、路地の次へ、著者の射程が広がっていることの表れだろう。
今後の著者の仕事が向かう方向を示しているようで、期待を持たせる各章である。