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異形の日本人 (新潮新書)
 
 

異形の日本人 (新潮新書) [新書]

上原 善広
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (20件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

虐げられても、貧しくとも、偏見に屈せず、たくましく生きた人たちがいた。哀しい宿命のターザン姉妹、解放同盟に徹底的に弾圧された漫画家、パチプロで生活しながら唯我独尊を貫く元日本代表のアスリート、難病を患いながらもワイセツ裁判を闘った女性、媚態と過激な技で勝負する孤独なストリッパー…社会はなぜ彼らを排除したがるのか?マスメディアが伝えようとしない日本人の生涯を、大宅賞作家が鮮烈に描く。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

上原 善広
1973(昭和48)年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、様々な職を経た後ノンフィクションの取材、執筆をはじめる。2010年『日本の路地を旅する』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 新書: 191ページ
  • 出版社: 新潮社 (2010/09)
  • ISBN-10: 4106103877
  • ISBN-13: 978-4106103872
  • 発売日: 2010/09
  • 商品の寸法: 17.2 x 11 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (20件のカスタマーレビュー)
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無責任な論考 2010/12/10
By カラグラ VINE™ メンバー
多くの方が本書を高く評価しているようだが、同意できない。

著者は、被差別部落をテーマに執筆活動をしており、前著でのその徹底的な取材は凄いと思った。しかし、本書では、残念ながらその著者の考え方の限界のようなものが見えてしまった。それは第一章『禁忌のターザン姉妹』にはっきりと現れている。その読後の言いようもない不快感は最後まで続き、私にはこの本を楽しむことができなかった。

ターザン姉妹という存在を、最初から何度も部落と関係があるかのように記述しておきながら、最終的にはそれが関係しているのかどうかを明らかにすることもしない(わからない)。挙句の果てには、ターザン姉妹の実写を見て、「時々町で見かける、知的障害児という印象」と書いてしまう。じゃあ、一体今までの「部落疑惑」はどうなったのか?邪推に過ぎなかったのではないか?そんな中途半端な論考を公にしてしまっていいのか?相手が既に存命でないなら、そういう事を書いてもいいのか?「時々町で見かける、知的障害児」なのに、「ターザン姉妹」と注目されてしまった不幸な姉妹という切り口はあり得なかったのか?だとしたら知的障害者が異形の人なのか?そもそもなぜ部落を持ちだす必要があったのか?取材の段階でそう考えても、裏付けが取れなければ書くべきではないのではないか?そういう感想を持ってしまった。この章には、非常にがっかりさせられた。著者の考え方の限界が透けて見えた気がする。
このレビューは参考になりましたか?
23 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
路地の次へ 2010/10/4
By picander トップ500レビュアー
主に路地(被差別部落)をテーマに執筆活動を行って来た著者。
前著『日本の路地を旅する』は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、次回作が待たれていたところ、
路地の次へ、著者の歩みがはじまったようだ。
本書に登場する異形の日本人のうち、直接の路地出身者は終章の桂春団治のみ。
関係があるとすれば漫画『血だるま剣法』の作者平田弘史で、本人は差別に立ち向かう漫画を書いたつもりが、
部落解放同盟から糾弾を受け絶版となるという皮肉を、著者は共感を持ってレポートする。
著者は無理に「差別」を論じることはない。
登場人物は皆学校で習うものとは少し違う論理に従い世を生きてきたために、差別的な世間の視線に晒されながら生きてきた。
本人は、無理に世間と折り合いをつけようとはしないけれど、肩肘はって世間と闘おうとも思っていない。
静かに、自分の職業に忠実に生きている。
そんな彼らの論理を、同じく声高な主義主張とは無縁に、静かにレポートする。
同時期に『畸人巡礼 怪人礼讃 (新 忘れられた日本人'U)』を出した佐野眞一よりも上原隆のルポような、さわやかで軽快な読後感が残るのは、著者の世代もあるだろうし、
路地からスタートしながら、路地の次へ、著者の射程が広がっていることの表れだろう。
今後の著者の仕事が向かう方向を示しているようで、期待を持たせる各章である。
このレビューは参考になりましたか?
10 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 放蕩息子 VINE™ メンバー
テーマも取材時期もバラバラなルボルタージュのオムニバスなので、全体のまとまりには欠ける。その中で私が最も惹かれたのは、第一章の「ターザン姉妹」のエピソードだった。

知的障害を(?)持って生まれた彼女たちは、それでも、10代半ばを過ぎるまでは、鹿児島の山村で特段の不自由もなく、村人の日常に溶け込んで、平和のうちに暮らしていた。もちろん、他の村人たちと多少は違うところもあったのだろうけれども、彼女たちだけが特に「異形のもの」として、村人の日常から否定される存在ではなかった。「村の子供たちも…(中略)…みんな面白がって、一緒になって姉妹と遊んでいましたよ」という証言が、そのことを裏付けている。

ところがその彼女たちを、近親婚の結果としての“先祖返り”ではないかと「疑った」精神科の医師と東大の研究者たちとの侵入によって、それまでは何の問題もなく円満に維持されていた村人たちのコミュニティの状況は一変する。あらかじめ予見を持った“外部”が、彼女たちの存在をより広い“外の社会”へと曝け出してしまったことによっていつしか、彼女たちは、村人たちにとっても、その存在自体を強く否定しなければならない禁忌へと変貌してしまうのである。
生まれ育った村落共同体の中で、その成員の一部として存在を認められていた姉妹は、精神科医師や東大の研究者、あるいは、それに連なるマスコミという“外部”の侵入によって、同じ共同体の成員自らの手で、“排除”されてしまった。

私はここに、“差別”が誕生する瞬間の、その根源的なメカニズムを垣間見る気がする。

そしてこのルポルタージュの特異な部分は、これまではずっと部落問題を中心に“差別される側”に寄り添って来たはずの著者自身が、ここでは他でもない、彼女たちを産み育てた村落共同体に侵入する“外部”として、差別の再生産に加担してしまったことにある。著者は姉妹との血縁関係を疑わせる老人に出会うが、彼に姉妹の消息を尋ねることを躊躇ってしまう。その瞬間に著者は(おそらくそれは本人の意図せざるものであったに違いないが)確かに自分自身が、差別される側から、差別する側に立ってしまっていたことに気づくのである。
(しかし同時に、著者にそれ以外のいかなる選択肢が残されていたと言うのか!)

著者はこの取材について「あとがき」で、「とても戸惑ったことを覚えている。」と書き、「それこそ特殊な経緯があり、それをそのまま書くことにした。」とも書いているが、それはこうして否応なく、自分自身が差別する側に立ってしまったことに対する違和感の表明だったのではないか。このルポルタージュを公表せず、ただ闇に葬り去ってしまえば、著者も余計な批判を浴びずに済んだのかもしれないが、しかしそれでも、老人と出会った瞬間に著者自身が差別する側に立っていたという事実は、他でもない、著者自身の中に残る。だからこそ著者は敢えてその事実を、人知れず埋もれたままにしておくことを「よし」としなかったのではないかと考えたい。

だから本書の「ターザン姉妹」の一章は、実は「ターザン姉妹」を取材したものではない。むしろ「ターザン姉妹を取材する自分自身」こそが、著者にとっての本当の取材対象となって「しまった」ルポルタージュなのである。

本書の第一章はそれゆえ、本書の中でも取り分けて異質な読後感を持っている。正直、読んで快いとは思わない。しかし我々はだからこそ、この割り切れない感じ、この不快感から、逃げてはいけないのではないかと、強く思う。この“胸くその悪さ”を、自分自身とは関わりのない他者のものとして著者に押し付けることなく、むしろ自分自身のものとして、我々の一人一人ずつが大切に、宝のように抱きかかえながら、生きて行くべきなのではないか。そんな風に感じた。

難しい本である。
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