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異常の構造 (講談社現代新書 331)
 
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異常の構造 (講談社現代新書 331) [新書]

木村 敏
5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

精神異常の世界では、「正常」な人間が、ごくあたりまえに思っていることが、特別な意味を帯びて立ち現われてくる。そこには、安易なヒューマニズムに基づく「治療」などは寄せつけぬ人間精神の複雑さがある。著者は、道元や西田幾多郎の人間観を行きづまった西洋流の精神医学に導入し、異常の世界を真に理解する道を探ってきた。本書は現代人の素朴な合理信仰や常識が、いかに脆い仮構の上に成り立っているかを解明し、生きるということのほんとうの意味を根源から問い直している。

「全」と「一」の弁証法――赤ん坊が徐々に母親を自己ならざる他人として識別し、いろいろな人物や事物を認知し、それにともなって自分自身をも1個の存在として自覚するようになるにつれて、赤ん坊は「全」としての存在から「一」としての存在に移るようになる。幼児における社会性の発達は、「全」と「一」との弁証法的展開として、とらえてもよいのではないかと私は考えている。分裂病とよばれる精神の異常が、このような「一」の不成立、自己が自己であることの不成立にもとづいているのだとすれば、私たちはこのような「異常」な事態がどのようにして生じてきたのかを考えてみなくてはならない。――本書より

著者紹介

1931年、外地に生まれる。1955年、京都大学医学部卒業。現在、河合文化教育研究所主任研究員。道元禅や西田哲学を精神医学にとりいれ、独自の人間学を提起して注目されている。著書に、『自覚の精神病理』――紀伊国屋書店、『時間と自己』中公新書、『人と人との間』『分裂病の現象学』――弘文堂、『偶然性の精神病理』――岩波書店――などがある。


登録情報

  • 新書: 182ページ
  • 出版社: 講談社 (1973/9/20)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4061157310
  • ISBN-13: 978-4061157316
  • 発売日: 1973/9/20
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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By トップ500レビュアー
木村敏は精神病理学者として異常と日常的に向き合っている。
この本は、「異常」ということについて根本から考えた深い思索である。

赤ん坊は「全」としての存在から徐々に「一」としての存在に移る。
私たちが「在る」と言っているものは、私たち自身の知覚行為の中から生じるものであり対象から由来するものではない。
しかし、人間はその奥に不可視の合理的とはいえない「こころ」とか「精神」をつくった。
また、科学そのものが人間の生への意志(無明)から生じたものである。自然から離れ、自然を支配しようとするものである。
合理的自然観である物理的存在というのは人間に都合のいい錯覚(仮象)である。
(離人症の人は、世界は実存性・現実性を失って単なるモザイクに変わってしまう)

この二重の虚構は人間に限りない不安をもたらす。
そして、「異常者」は「正常者」によって構成されている合理性・常識性の世界の存立を根本から危うくする。
このことが、世界から異常者を排除しなくてはならないという理由である。
(あらゆる差別の淵源ではないだろうか)
私たちが「なぜ、生きているか」という、答えのない通奏低音が深く響いてくる。
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29 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
香山リカさんが推薦していたので、「ちょっと読んでみるか」という気楽な感じで本書を手にしたのが事の始まりだった。本書を読んだ後、これまで自明なものだった「自分というもの」が、正確に言うと「自己意識というもの」が、もろく崩壊してゆく予感を覚えた。それまでの僕は、人間と動物の区別について一定の見解を持っているつもりだったが、著者の主張によって、人間も動物も根底では変わらないことを自覚した。『自我とは我々の一人一人が偶然性の翻弄から身を守ろうとして発明した虚構に過ぎないのではないだろうか。』別の本でこう言われたとき、曖昧だったものが一挙に統合され、戦慄を覚えた。著者の本4冊目の戦慄だったが、本書を読まなければこの体験とも無縁だったであろう。著者の初期の作品であり、作品の中では極めて分かりやすい本である。
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25 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 精神分析学者である木村敏は、西洋の学問である精神分析によって日本人の自我を分析することに疑問を覚えた。そして彼は道元や西田幾多郎の概念を導入したのである。この本は彼の独創的な著作の中でも入門書として最適だろう。正常と異常、それはミシェル=フーコーが初期の著作「狂気の歴史」において詳しく述べているが、木村の結論は折りしもフーコーが別の機会に語った「私たちは今見ている以外の方法で、世界を認識できるのかということ。それこそ絶対になされなければならない仕事なのである」という言葉を想起させる結論を述べている。その結論については実際にこの本に触れ、体感してほしい。
 
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