著者が JIS 改正委員会などで符号化文字集合の策定に携わっている小池和夫氏ということもあって、軸足は文字コード...それも JIS(JIS X0208 - JIS X0213:2004)に置かれているようです。『康煕字典』や開成石経といった中国の古典籍や、Unicode(ISO/IEC 10646)や Adobe Japan といった JIS 以外の符号化文字集合の話題も一応 出てはきますが、明らかに "日本の"(もしくは JIS 改正委員としての小池氏の)異体字の世界観で閉じています。俗字・譌字・本字といった異体字の「ラベル分け」についても、お茶を濁したような説明で終わっており、本書によって「異体字の世界」を体系的に理解するのは、残念ながら非常に難しいといわざるを得ません。
あくまで個人的な印象になりますが、大部分が異体字で占められる JIS X0213 の第3・第4水準漢字を、選に漏れたものや第1・第2水準の異体字も交えて可能な限りたくさん、雑学っぽく紹介することが本書の真の目的のように感じられました。個別の異体字の解説も、根拠が明示されていることは稀で、一貫性、体系なども見られないので、本当に『JIS 異体字手冊』みたいな感じです。
本書に代わる異体字に関する良書は残念ながら思い浮かびませんが、JIS X0213 の改正をめぐる話なら、小形克宏氏の連載「文字の海、ビットの舟」(INTERNET Watch)の方をオススメしたいです。