今や京極夏彦の諸作品ですっかり知名度が上がった、狩野派の絵師・鳥山石燕の妖怪画集である。 本書のタイトルだが、角川文庫版では「がずひゃっきやこう」、京極の『姑獲鳥の夏』の本文中には「えずひゃっきやぎょう」と、それぞれ読み仮名がふってある。まあ、読み方はどちらでも良いのだろう。 本書は表題作の他に、シリーズ作の「今昔画図続百鬼」「今昔百鬼拾遺」「百器徒然袋」を加え、全4部となっている。 朝日新聞の記事の言葉を借りれば、この画集の妖怪達は、「どんな時、どんな場所に出現したかという伝承や物語についての説明はほとんどなく、姿形や性質の情報だけがまるで陳列品のように並んでいる」のである。全くその通りで、中には説明は皆無で、妖怪の名前だけしか記されていない画も少なくないのである。 こうなるとやはり情報が欲しくなってくる。この国書刊行会版は、全ての画に短い解説を付けてくれているので非常に有り難い。原書よりはやや縮小して印刷されているのが残念だが、レイアウトの関係で仕方がなかったのだろう。製本はしっかりしており、印刷も秀逸、保存版としては最適だろう。ただ少々高値なので、とても手が出せないという方が多いのではないだろうか。 それにしてもこの古(いにしえ)の時代の画集を眺めていると、本当に妙な気分になってくる。妖怪達の造形も然る事ながら、石燕の絵師としての力量には感服するのみである。この時代の人々はどのような思いでこの“天下の奇書”を受けとめていたのだろうか。