本書は、題名からわかるとおり江戸時代の「花形」の町火消が近代
以降どうなったかについて書かれている本であるが、江戸時代の消防に
ついても簡単な理解が得られる本である。
興味深かったのは、行政(警察や役所など)が消防の近代化を推進
しようとするたびに、町火消の反発が主因となり近代化が進まなかった
ことである。それは、本書でも明らかにされている通命じの末期でも
その風潮が残っており、出初式などは江戸時代から現代まで継承されて
いるという。注目すべきことは、町火消≒自衛消防の組織という図式が
大まかに描けるが、明治末期になってくると町火消の衰退≒自衛消防力
の低下という情景が浮かんでくることだ。
この図式が変化してくるのが、関東大震災であるという。この震災後
の調査で、工兵や一般人等の「素人」が破壊消防を行い「意外の効果」
を挙げたという。
その後、満州事変から太平洋戦争に続く道のりの中で本書でいう
「素人」たちは「警防団」として組織されるのだが、これは関東大震災の
時の「素人」消防の「意外の効果」を挙げたことに国が注目したのでは
ないかと思わせられる。
消防という生活に密着した事例一つとっても国家の一側面を明らかに
した好著である。