この著者の「腕時計一生もの」はなかなかの良作だった。
初心者にもわかりやすく腕時計の魅力を提示し、なおかつ、ある程度のマニアにも満足できる内容で、新書としてはきわめて妥当なものだったと思う。
今回のこの著作も、基本的には前作を踏襲している。
そのスタイルは一貫していて、時計メーカーの方針を理解、養護する立場にあり、辛口の内容では全くない。
汎用ムーブであるETAについても、「ETAポン」などとバカにするのではなく、基本的に優秀なムーブであることを強調する。
まあ、たしかに私もETAポンという言葉は嫌いだが、しかしその一方で、50万円以上のETA搭載モデルが、すべて面取りや装飾が行われているかという点は、はなはだ疑問であるが・・・。
というわけで、基本的には甘口の著者であるが、意外にそのホンネは、第4章のブランド分析のなかの、「ホメるポイント」「買わない言いわけ」あたりに隠されているのではないかな。
しかし、この著者が時計について詳しいのはわかるのだが、その社会分析に関しては「浅い」と言わざるを得ないだろう。
「医者には一般の週刊誌や雑誌はほとんど読まない人が多い」とか「医者は親から入学祝いにロレックスを買ってもらうことが多いので、ロレックス愛用者が多い」、「(IT経営者のように)若くして富を築いた人は、先輩からものを教わっていないので、その時代の流行商品に飛びつく」なんて紋切り型の分析を読むと、いくらなんでも、そうとばかりは限らんだろ、と思ってしまう。