本書は古今東西の歴史上の有名人14名をその肖像(絵画あるいは彫刻)とともに紹介する、20年以上前に発表された作品である。各人に10頁程費やしているだけだから、短時間で気楽に楽しむことができる。古代地中海世界から選ばれているのは、ペリクレス、アレクサンダー大王、大カトー、アグリッパそしてカエサル。カエサルに関しては作者の熱い想いが告白されているかと思いきや、さにあらず、クレオパトラへの恋文の戯作。こういったお遊びも含まれているが、本書の特徴は、ヨーロッパ歴史物の著作が多い作者の、北条時宗、織田信長、千利休、西郷隆盛、毛沢東という東洋人に対する寸評が読めること。特に織田信長の宗教戦闘集団弾圧を評価している点には賛同する。彼が「日本人に与えた最大の贈り物」は「狂信の徒の皆殺しである。」とは信長の功績に対する実に痛快かつ的確な評価である。彼が4百年前に大掃除をしてくれたから、日本人は宗教に対して免疫になり、他の多くの国が今でも苦しむ宗教紛争を免れてきたのだという作者の見方は、ローマ人の物語シリーズ終盤で逆にヨーロッパ世界が宗教の弊害に苦しむことになったとする見方に通じる。信長の章では秀吉にも触れ、秀吉を信長に無我夢中で仕えさせたのは信長のカリスマ性であり、山崎の合戦以降の秀吉には興味がないと斬って捨てる。「男は、神を男同士に求め」、女は、「女のためには絶対に死なない」、とする観察は鋭い。あと、北条時宗という、あまり歴史小説の主人公として取り上げられることはないが、未曾有の国難を乗り切り33歳の若さで死んだリーダーに贈った賛辞も感動的。このように、信長と時宗の2人によせる作者のまなざしを感じることができるだけでも、本書は一読の価値があります。