合気道の稽古をしていた時に、甲野善紀さんの本は数冊読んだ。
その時は技そのものよりは稽古法や指導法について関心を持っていた。
技そのものは、合気道を二十五年近く稽古した者としては驚きは無い。
自分がすべてできるかどうかは別として、その基本的な体の動きやその
結果は、人の動き自然のものである。
しかし、現在の決められた技をただ繰り返すだけの合気道、また入身転換、
呼吸力など先人の言葉で固定した観念で考えるだけの変転のない合気道では、
甲野さんのレベルに達するのは極めて困難なことも間違いない。
それ以上にこのDVDの撮影期間の中でも本人自身の認識や術理が生成発展
している姿がすごいと感じられる。
このことは、『居つかない、常に進化する』と表現されている。
また、道場の中での技の稽古だけではなく、社会、生活そして、合気道、
格闘技はまだしも、各種スポーツ(ラグビー、フェンシング他)、音楽
(フルート、太鼓他)、演劇、介護など多様な分野にプラスの影響力を発揮
していることがすごい。
本人は指導しているのではなく、自ら稽古を続け、その技を実践、応用する
姿を見せているだけだろいうのがもっとすごい。
教えようとしていないのに広まっていく姿がここにある。
語録集の中で、印象に残った言葉の一つは「鎧は持つと重いが、着ると軽い」。
語録の中の一部「身体の中で滞るところがなくなれば、感情を不愉快にしよう
としてもなれない。・・・」、この文章を私は「笑っていれば怒れない」と言う
ようにもいえると感じた。
言語ではなく、身体によるコミュニケーション、そして身体で考えること
の実践書(見る本)である。
一度は見て、考える、そして考えないで感じとってみてはいかが、とお勧めする。