例えば駒大苫小牧の連覇と準優勝は記憶に新しい。その後の不祥事も世間を揺るがせた。
時代を遡れば、星稜対箕島の延長18回もテレビ画面を通じたナイター映像は、まぶたに焼き付いている。
演じられたストーリーはドラマチックで、何年たっても語り継がれる。
だが、物語はその時だけで終わらない。むしろドラマを演じた人たちのその後のドラマが私たちの胸を熱くする。
本書は甲子園で今も語り継がれる伝説のゲームやヒーローにスポットを当て、さらにはその後の人生の軌跡を追いかける。演じた舞台が大きければ大きいほど、彼らの人生の振幅も大きい。
不祥事で駒大苫小牧の香田監督と選手たちのあいだにできた溝とその修復は、本書を読むまで知らなかった。星稜のエースが背負った延長18回の肩書きの重さにも驚いた。
その他4編も含め、よくぞここまで掘り下げたなという感慨がある。とくに矢崎良一が描く人間ドラマは胸を打つ。
この夏の甲子園とともに味わいたい1冊だ。