『田舎の刑事の趣味とお仕事』に続く第二弾。
田舎の巡査部長黒川鈴木を主人公にした、いかにもカントリーな謎解きシリーズ(今回は殺人もあり)で、謎解きには説得性があるのですが、それ以上に小説として、セリフがユーモアを通りこしてブラックな笑いを誘います。
ちょっと偏執的なほど、部下の脳天気な白石を追い詰める硬骨漢の(融通のきかない)黒川、そしてその主人を一言のもとに斬ってすてるクールな「黒川の妻」。普通のヘタレ系ミステリよりはアクが強く、大人向きな味わいです。
特に今回も、過酷な節電で署内の冷房をほとんど使わせない黒川の目を盗んで、ビニールプールに入った部下白石を追いかけ、川での大立ち回り。帰ってみれば、署の前で、「妻」がなぜかアイスキャンデーを売って、大繁盛しており、「妻」の前ではまったく形無しの黒川に部下達は留飲を下げる、と言った、かなりシュールなエピソードが最初から引きつけます。謎解きも、黒川は地道にこなしており、頭脳は明晰なのですが、このコメディ要素があまりに強烈なので、どうしてもそちらが読後に残ってしまいます。ことに「昆虫記」での部下との罵りあいとエゴむきだしの対決は最高で、謎解き、えっ、何だったっけと。
ところで、前作で気になっていたのは、年齢、外見、服装、その他、主要人物(犯人、証人ふくめ)のヴィジュアル描写がほとんどないことでした。今回もそれは変わらず、黒川鈴木さんは何歳で、どういう風貌なのか、部下も年齢順しかわからないし、一番強い「妻」でさえ、ヴィジュアルいっさい抜き、服装も髪型もなしで「妻」としか書かれません。
書き方もいきおい、セリフ、セリフ、セリフのかけあいが多くなり、長い説明もセリフでなされます。それがちょっと読みにくいです。後半の「闘病記」や「動物記」はその傾向が強く、聞き取り調査をセリフで並べたような印象もなきにしもあらず。ラジオドラマ再録といった感じもします。見開きのページがシナリオ状態なのは、ただおちゃらけや漫才の場面ならよいのですが、重要なデータや状況説明であったりするとなかなか頭に入ってきません。
それがこのシリーズの特徴なのだと思いますが、人物が全部白抜きのような脳内映像化しかできないのがつらかったです。
海外が舞台になった誘拐事件「台湾旅行記」では、さすがにヴィジュアル描写が多く、一番バランスとしては満足できました。謎解きもきれいに頭に入り、残ります。
帯を見ますと、新春からTVドラマ化されるそうなので、このシリーズの音声への偏りはまったく問題なくなるようです。とはいえ、「妻」はだれがやっても、原作のイメージと違うことになるでしょう・・それだけ「セリフだけ」の存在感があります。