表紙の碧い海を背景に悠々と歩く猫に誘われてページを開くと、いきなり大きな魚をがっしりと
咥えた猫が現れる。他の猫に横取りされてなるものかという緊張感が漂う。一方、向かいのペー
ジには、ゆったりと躰を投げ出した猫がこれでもかと大きなあくびをしている。
この見開きのページを見た瞬間に、ここには違う空気、違う時間が流れているのが分かる。
命の糧を守ってくれるこの生き物と共に暮らすことを決めたのは我々人間なのだが、人間の暮ら
しの変化は彼らに窮屈な思いをさせている。しかし、この北の小島には著者が巻末に書いている
ように、遙か昔に人類と後に「猫」と呼ばれる生き物の交わした契約が生きているのだ。
この本には、島の人々と関わりを持ちながら暮らす猫たちの日常が詰まっている。その姿の何と
魅力的なことだろう。あるがままというのは、このようにおおらかでゆるぎないものなのだ。
島の猫社会は予想外に多様で、著者は猫に負けない「待ち」の姿勢で、しかしその瞬間が来れば
いとも鮮やかにシャッターを切って、瞬間瞬間をあっぱれまるごと生きている猫たちの姿を逃さ
ない。こうして捉えられた生き生きとした猫たちの姿に、驚き、微笑み、時には大笑いさせられ
る。
最後のページまで来ると、また最初から見たくなる。何度見ても見飽きない。こうして、読者で
ある私も少しずつ島の空気や時間に馴染み、島の猫たちと親しくなって行く。そして、この島の
暮らしがいつまでもいつまでも続きますようにと祈り始めている。
猫を愛する友人たちにぜひ贈りたい本である。