一人の人間が一生にできることは小さくない。生まれた時にはすべての人に同じ機会が与えられ、数十年のあいだそれぞれの道を邁進し、ある成果を上げて人生を終わる。数千年の歴史を経て、今の日本はこれが自由にできる民主主義の国になった。人の能力、描く大志、人柄、人望、社会の動きなど色々なことの加算、乗算で一生は決まる。今の日本に、理不尽な拘束はない。とてつもない夢を描き実行すれば、何でもできる。田中角栄はこれを証明したような人だ。戦後を思い起こせば、停電は日常的でロウソクは必需品だったし、東京でも冬にはよく雪が積もり、融けたあとの泥んこ道は本当に歩きにくかった。しもやけの足を擦りながら良く勉強もした。そうすれば明るい未来があると感じていた。夏の終わりから秋にかけては、毎年のように台風で九州地方の家が流されるニュースが流れていた。とても先進国とはいえなかった。佐久間ダムの建設映画、次々に建てられる東京オリンピック施設を見て、期待できる未来を感じ建設分野の仕事を選んだ。自分の人生は自分で選んできた。しかし、その背景に流れていた日本の近代化、政治のなかで、一つの駒としてこれに翻弄されていたのかもしれない。それでも良い、私は私で楽しかったし、角栄らと一緒に夢を追ったようにも思う。しかし今は、これからの日本の進み方を考えなければならないときだ。この本はなにか考えさせてくれる、本当に興味深い素晴しい本だ。