黒澤時代劇はどれも大好きだが、最もしつこく見返したのはこれだ。何がスゴイと言って、三船敏郎だ。彼のカッコ良さがほとんど神憑りなのだ。なんたる「華」だろう!
他のレビュアーの方に先を越されてしまったが、まさに三船と仲代の最後の対決シーンである。「近寄るんじゃねぇ」と脅す仲代相手に三船はニヤリと笑う。そして肩を揺すり一歩踏み出す。そしてあの忘れ難い音楽。
この瞬間の三船に「何か」が起きるのだ。背中に電流が走る。目を見開く。こんなカッコイイ男見たことないって!
この「何か」をナニに喩えようかと考えて困惑する。詩人なら詩で表現するような「何か」。唯一捻り出せたのは、現在世界最高のバレエダンサー、シルヴィ・ギエムの『ボレロ』の舞台だった。彼女の『ボレロ』は何度も見たが、ある日、彼女がクライマックスで何かをした。小さな仕草だったかもしれないし、ちょっとした目線だったかもしれない。長い赤毛の舞い具合だったかもしれない。その瞬間に「何か」が立ち現れ、全身に電流が走った。
魅力的な俳優も上手い俳優も世界を見渡せばいくらでもいる。しかしカリスマ的スターなどというものはほとんどいない。三船は器用な俳優ではなかった。しかし彼のような人こそが「スター」なのだと、しみじみと実感する。そして、この映画の、あの瞬間、三船敏郎は紛れもなくカリスマ的スターなのである。黒澤はその「瞬間」を映像に捉えた。
ちなみに、最近知ったのだが、シルヴィ・ギエムは三船敏郎のファンらしい。彼女のHPに三船の写真がアップされている。カリスマはカリスマを知るのである。