生田誠氏が書かれた「『都モダン』と『乙女デコ』の誕生」の中で、知られざる若き日の小林かいちの写真と出会えたのは朗報です。これは貴重ですね。42ページでもセピア色になった若き日のかいちの姿が大きく取り上げられています。
最後の「父の思い出」では、ご子息の小林嘉寿氏が晩年の小林かいちの写真を掲載して、その思い出を語っています。人となりが伺える内容が詰まっていました。
本書では、かいちの絵封筒の作品が10ページから紹介してあります。オールカラーですから、その美しさは如実に伝わってきました。絵封筒に登場するデザインはシンプルなのに、哀愁を感じさせる作品が多く、どこか薄倖な女性の姿が大正ロマンというイメージを超えて、現代でも通用する質の高さが伝わってきます。儚くも切ない女性美を簡潔な筆遣いで表現する力量があるからこそ現代でも印刷媒体の表紙を飾ったり、様々なカヴァーとして使用される所以でしょう。
どのページのデザインもそうですが、眺めているだけで癒されますし、その抒情豊かな世界に引き込まれます。ストーリーも感じられ、時代を超えて愛される普遍性を内在している作品群でした。大正から昭和にかけて、京都のアール・デコという副題に相応しい作品を残した小林かいちの作品に魅せられました。祇園の舞妓のデザインなどまさしく京都らしさが溢れている作品でした。
挿入されている2つのコラムの情報も面白く、かいちファンにはたまりませんでしょう。141ページに小林かいちの略年譜があり、着物の図案家として生計を立てていながら、27歳の頃に「京都京極さくら井屋」から絵封筒や絵葉書を発売して人気を博したことが分かります。この頃は小林うたぢの名前で描いていました。