本書のタイトルは甦るロシア帝国ですが、内容はソ連崩壊の過程と原因を民族と宗教と思想という視座から描いてるものなので、ロシアがエネルギー資源を背景にしていかに復活してきた過程が書かれていると期待すると裏切られるでしょう。また本書で主に描かれるのは、ソ連崩壊過程でロシアの知識人層とその予備軍の考え方とその変遷であって、ソ連経済や当時のソ連を取り巻く外交上の問題については話の背景に追いやられていますので、そうしたものを期待すると裏切られると思います。筆者の見解、あるいは主張は「自壊する帝国」と同じでしたが、本書は当時の政治エリートや分離独立運動の当事者達が主な登場人物であった「自壊する帝国」とは異なり、「甦ったロシア帝国」を支える若い世代の知識人がどのように見て、考えたかを中心に据えています。ロシアの復活は現在進行形ですから、本書でいう若い世代、第三のエリートに対して、総括的な評価がされているわけではありませんが、ロシアの若い世代の知識人階級の原体験を知るよい導になりうる本だと思います。