産学官連携やイノベーションを考える人、企画する人、推進する人、研究する人にとって必読書。具体的な事例、数値などを丹念に取材をして積み上げて、一枚の大きなダイナミックなタペストリーにするような本書の言説と著者のライティング・スタイルには説得力がある。
実際に脚を使ってイノベーションの当事者たちに会って、詳細な表裏の話を聞き取るというジャーナリスティックな手法は、とかくスタティックな文献引用、事例検討に終わりがちな「産学官イノベーション研究」の系譜に大きな一石を投じている。
九州大学、九州工業大学、北九州市立大学、福岡大学、早稲田大学などが形成している「福岡先端システムLSI開発クラスター」には、システムLSI企業が300社以上集まっているという。こう平板に書いてしまうと、単なる産学連携ののっぺりとした構図のように見えてしまうが、本書の圧巻は、その力動的なディテールの記述にある。
概念操作や抽象的なモデル提示、あるいは、問題の提起に終始しがちなこのジャンルにおいて飛びぬけた内容だ。要素技術に関心を寄せる産・学・官関係の関係者は、要素技術、デバイス、試作機などのディテールにおいてこそ、産学官連携の成果を実感するものと思われる。大変参考になり、かつ刺激的な内容満載だ。