フランスの人口統計学者ルブラ氏の言葉です。
欧州でも日本と同じように母親の責任が重く、
深刻な出生率の低下を招いているドイツを評した言葉だそうです。
著者は、NHKの国際局ディレクターとして勤務後、
朝日新聞社で記者として勤務した経歴をも持ちます。
留学や育児を含めてフランスには4年滞在。
2005年にパリで、2006年末に東京で、
それぞれ男の子を出産・育児を経験しているようです。
本書では、パリで育児をする25歳から57歳までの、
子供がいるフランス人女性34人へのインタビューで、
当時のフランス人女性の実情の一部が調査されています。
フランス人女性の考え方や体験談をもとに、
フランスでの育児政策、支援、風潮、識者の意見、フランスの歴史、
などを織り交ぜながら、エッセイ風に、
『フランスの子育て事情』が紹介されています。
第1章の働くママの24時間では、家庭と仕事を両立してはじめて、
フラン人女性としての前提に立てる、フランス人女性たちが
何組が紹介されています。
子育て支援や政策に対して、自分の環境で、
なんとかやりくりするフランス人女性の日常。
特に、フランスでの専業主婦の地位がどういうものなのかなどは、
日本ではあまり紹介されていない実情と感じました。
フランスの歴史的背景や女性解放運動、
複合家族を築いた女性たちの家族の話も何組か取り上げられています。
あと、本書では、フランスの識者の意見がいくつか紹介されていますが、
例えば、労働者の休暇に対する本書の内容では、
日本の雇用習慣に詳しいパリ第一大学のコデュ教授の言葉が、
日本の集団主義を次のように揶揄していました。
『日本では、法律に対する意識が少し低いように思います。
日本で尊重されるのは、個人よりも集団です。
個人が規則を武器に、集団の意思に対立できるとは考えられていない。
日本では法律よりもむしろ慣習が重要なように思えます』
しかしフランスの育児休暇の内容になると、
手のひらを返した矛盾する意見へ変わります。
『産休には長い歴史があり、誰もが必要だと考えるコンセンサスができています。
客観的にはも、産後の女性は疲れているから産休が必要です。
でも歴史の浅い“育児休暇”は、法律にはあってもまだ慣習になっていないのです。
育児休暇を取るのは、仕事にあまり真面目でない人だと考えられてしまう』
この本の著者自身は、そんなフランス女性の実情を紹介しています。
「法律で決められた産前6週、産後10週、計16週の産休では、
手取り給与とほぼ同額の手当てが国からもらえる。
加えて、最長3年の育児休暇もある。
その間は無給だが、それまでに2年以上働いて社会保険を納めていれば、
最初の子供なら6ヶ月、2人目以降なら、
3歳まで国から月約530ユーロ(2008年当時)の育児手当がもらえる。
しかし、こうした整備が整っていても、
1人目の出産なら産休を取らずに仕事を続けるのが、
フランス女性の現状だ。
実際には、産休に有給をわずかばかり足して、3ヶ月そこらで復帰する。
2006年のフランス国内統計でも、1人目の子供が産まれた家庭で、
仕事を中断したり短縮勤務にしたりして、
育児手当を受け取るのは2割に満たない。
法律には、育児休暇をとった場合、
前の仕事か、少なくとも同等の報酬で同様の仕事に戻れるとある。
でも現実に、戻れる仕事・職場を保障され、
安心して育児休暇を取れるフランス人は少ない」
集団主義と似たような社会の風土や世間の風潮は、
フランスにも存在し、日本と同じように個人の足かせになっているようです。
問題は集団主義ではなく、もっと根本的なこと。
それを本書で改めて認識させられた気がします。
おそらく、本書に男性は5%も登場しないと思います。
女性は共感する部分と、自分なりに思い感じる部分が、
非常に多い本と思います。
結婚に夢とロマンスを描く女性や、
これから結婚や出産育児を控えている人・家族には、
良し悪しを土返ししても、読んでみてほしいな、と思える本です。
そして読んだら、是非自分の子供に、自分が本書を読んでいる姿を、
見せてあげてほしいなとも思いました。
あえて本書のマイナス面を具体的に挙げません。
個人的には興味深く読めました。
本書で、少しでも日本人女性が救われることを期待します。