道迷い4件(厳密には1件はやや異なる)、滑落2件、気象遭難1件の計7件の遭難事例を検証したもの。
本書は現在、『
ドキュメント生還−山岳遭難からの救出』として文庫化されている。そちらの商品説明に「初版時の七つのケースに、近年の丹沢・大山での遭難事例を加えて再編集した」とあるので、これから買う人は文庫版を買った方がよさそうである。
遭難の原因としては、事前の調査不足、安易な予定変更、気象の変化にたいする無知と油断、などである。
タイトル通りすべて生還ケースだが、著者は追記でその必須条件をあげている。
・家族・知人や地元警察に登山計画を知らせておく(救助要請が円滑になされ、またそれを信じて耐えられる)。
・遭難したら徒らに動き回って体力を消耗せず、一箇所にとどまって救助を待つ。
・装備は用意周到に(火、ストーブ、非常食、ツェルト)。
このうえで更に、自力下山か救助要請すべきかをどの時点で判断するのかという問題、またそれを冷静に判断することの難しさを述べている。
他にも、著者や被取材者(遭難者)の意見や指摘として、登山相手に依存した山登りをしない、脚を負傷したときの注意点、ヨモギの薬効、気温低下による注意力・思考力への影響など、興味深い話があった。
もっとも印象に残ったのは、滑落して脚に大怪我を負い、傷口に蛆虫がわいてしまったケースである。蛆虫が眼球の裏に回って涙道が食われてしまう話にはぞっとした。そうした危険があることを一応記憶にとどめておきたい。