1970年代半ばに出版界・映画界に革新的大旋風を巻き起こした時代の風雲児・角川春樹!――本書の表題は近年の角川春樹氏の座右の銘である――
本書は、かつて覚せい剤取締法違反で逮捕経験があり、ジャンキー〈薬物中毒者〉としての私的な生活を描いたノンフィクション小説『
SPEED スピード』『
アフター・スピード』で知られる著者・石丸元章氏が角川春樹氏の不肖の弟子である事を公言し、わが師・角川春樹との師弟問答の形式で脳・宇宙・芸術・超常現象について語りつくし、まさに常識社会をぶち壊す内容となっている。
とくにまえがきにおいて師のどのような発言にも当然のごとく受け入れる著者の姿勢に何かしら寒気立つ。著者にとっては、師の教えに疑念を抱く輩の存在が不思議でならないと思うだろうが、一般の人から見れば、「日本を襲う大地震を止めた」「モンゴルの夏に雪を降らせた」といった傍から見れば誇大妄想(注:春樹氏にとっては紛れもない事実である)に思える内容を自ら喧伝する者を素直に受け入れるという事はある意味、カルト的な危険性をはらんでいるからだ。
もちろん、春樹氏の出版界や映画界、文学界における輝かしい功績は十分評価できるのであるが、その反面、人一倍の自信過剰と独善性と虚栄心の強さが難点である。
そうした関係で語られる師弟問答であるが故に
福田和也氏のようにオブラートで包まれた内容ではないので春樹氏関連の書物を初めて手にする読者にとってかなりハードな内容であろう。
私自身もそれなりのハルキスト(春樹信奉者)としての自覚を持っていたつもりであったが、読後感は『
あしたのジョー』でボクシングへの思いを語るジョーの話を訊いた紀ちゃんの心境でした。
そのココロは
「わたし、ついていけそうにない…」