対象者に現金を渡すという究極のセーフティーネットである生活保護。だが、一般の人の目に映るのは「行政による生活保護受給率抑制の犠牲となった高齢者の孤独死」や「高そうなマイカーを乗り回す不正受給者」といった特異な例ばかりで、その実像は見えにくい。
本書は、生活保護行政に携わった経験を持ち、ネット上で広く相談を受け付けている自治体職員である著者が、「失われた10年」で新たな貧困層が生まれている中での生活保護を取り巻く現状と、保護率抑制の真の犠牲者を、具体的な事例を通じ、描き出している。
当事者のためにも、社会的費用を考えても、生活保護の目的が「困窮者を支えること」にとどまらず「自立を支援すること」であるべきだ、そのために関係各機関が連携しての、より幅広い角度からの支援を、という指摘には、目からウロコが落ちる思いがした。
もちろん、次の段階として、職を得ての自立に向け、例えば非正規雇用労働者の待遇をどう改善していくか、といった問題はあるが、まず「不正受給を許してはならない」一方で「困窮している人を一人でも漏らしてはならない」という難しい課題を負っている生活保護のあり方を考える上で、非常に有益な一冊だと思う