アメリカ的なものの本質を鋭く抉り出し、そして厳しく弾劾するのが本書の見所です。著者はアメリカマイノリティーの研究者であるので、アメリカ的偽善をもっとも敏感に感じざるを得ない人たちを通じて、その社会が内包する病理に詳しくならざるを得ず、アメリカ人が如何に本音と建前の乖離した存在であるかを一つ一つ目を疑うような実例を通じて紹介していきます。その一例を挙げるなら、すでに20世紀を迎えていた時代、殺人を犯した黒人を生きたまま切り刻み、しかもそれを見物するために多くの人が集まっていた、などまさに耳を疑うおぞましいものです。そして、それがどのような歴史的背景から生まれてきたのかを考察していくのですが、これがまた衝撃で、今までアメリカの美徳を代表するかのごとく見られていた人たちが、その実俗臭プンプンたる侵略者であったような現実を見事な筆致で暴き立て、これもまた驚嘆すると同時に戦慄を呼ぶものとなっています。
本書では、アメリカという存在がどれだけ多くの恥部をその中に、しかもごく当たり前に内包していたかを見せ付けてくれますが、もしそれがアメリカという国をただこき下ろしたいがために書かれたのであったならば、私はあまり好きにはなれません。しかし、著者はアメリカが好きなのです。アメリカは好きだけれども、それでも言わねばならぬこの事実。そんなスタンスを私は好意を持って評価したいのです。事実多く引用されているアメリカへの批判はアメリカ人自身がなしたもの。著者はそれを孫引きしているとも言えるのですから。そんな重層的かつ多面的なアメリカの社会を知るには本書はもってこいの入門書あろうと思います。書かれた時代は多少古く、今から見れば楽観的に過ぎるような部分もありますが、反面イラク戦争などで、今でも認められるアメリカ的性質を解く鍵を十二分に与えてくれるものでしょう。