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生活の世界歴史〈10〉産業革命と民衆 (河出文庫)
 
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生活の世界歴史〈10〉産業革命と民衆 (河出文庫) [文庫]

角山 栄 , 川北 稔 , 村岡 健次
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

快適を求めた生活大革命時代。近代都市生活の成立過程の中に、豊かさへの夢と現実の矛盾構造を詳細具体的に描く。

登録情報

  • 文庫: 361ページ
  • 出版社: 河出書房新社 (1992/02)
  • ISBN-10: 4309472206
  • ISBN-13: 978-4309472201
  • 発売日: 1992/02
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.4 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
 私は“近代”なる言葉を恰もそれ以前よりの断絶を示すかのような文脈で使われることには強い違和感を感じていました。今さすがにそこまで安直な用法で近代化を語る向きは無くなって来たのでしょうが、まだ何処と無く“近代”には光り輝くヨーロッパの残滓を包んで、憧憬と怨念を含んだ、それまでの何処でもない、まったく新しい世界という印象が拭い難く存在しているように思います。そこで、“近代”の先駆者であり、推進者であった世界は一体どんなものだったのかということを知ることが、“近代”とは何なのかという理解にとって必須ものでありましょう。それも制度の変化、思想の変化など、より純化された形而上的部分を引くのではなく、人類の進歩を思案するより、明日の夕食の献立を、お隣さんとの近所づきあいを思案したであろう、人間の卑近でしかも不可欠な日常を追うことによって、その実像に目を向けることによってこそ、本当の近代化の諸相が見えてこようというものではないでしょうか。所詮どんな偉大な政治家も思想家も、第一義的にはその時代の空気を吸っていた生活者であることを出ないのですから。
 前置きが長くなりましたが、そこで本書です。本書はまったくそんな痒いところに手が届く、もしくは届かせようとの努力の下に書かれており、必見の書です。茶、砂糖、煙草など嗜好品の普及による一般化とその階級社会への目に見える影響。公害の萌芽と世界の最先端を行くにしては古代にすら劣る、余りにお粗末な社会資本。工場に勤める労働者の一日の描写から、そんな「まっとうな」労働者の中にすら入れてもらえない、その日暮の労働者たちの多彩で悲惨な生活。型や暇をつぶすことが仕事の世界と新しくその中に入るための階梯。この他一章一章、一頁一頁が極めて好奇心をそそられる、興味深く魅力的な情報に満ち満ちており、読んで絶対に後悔しない本と、断言できる一冊です。
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形式:文庫
 本書が取り上げるのは、現代社会の原点ともいえるイギリスの産業革命時代(18世紀中頃〜19世紀中頃)。産業革命とは、農業=土地に依存する「農業社会」から、工業=資本に依存する「産業社会」への移行を指すが、一般には機械の発明と工場制生産を軸とする近代資本主義の成立期を産業革命時代とする。この時代はまた、旧い社会秩序が崩れつつあるが、まだ新しい産業社会の秩序が確立していない過渡期でもあった。

 前近代社会では、人口の大多数は農村コミュニティで生活していた。コミュニティで生きている限り、完全な自給自足ではないにせよ、労働力の再生産に必要なものはほぼその内部で調達できる。衣料は自家生産の織物を着用するし、食料は村で収穫した穀物・家畜の肉・川でとれる魚が中心。住処も共同地の木を伐って建てればよいし、燃料の薪炭にも事欠かない。自然災害に見舞われることがあっても、日常生活はコミュニティに支えられ安定していた。衣食住だけでなく、教育・娯楽・医療・福利厚生・治安維持といった社会生活に必要な諸機能もまたコミュニティの内部でそれなりに充たされていた。

 産業革命時代に入ったイギリスでは、人口が急増しかつ農業人口の比率が急落する(1750年には約半数あった農業人口が、1800年には36%、1850年には22%へと急速に減少)。前近代の人々にとって生活の場である農村コミュニティが崩壊し、代わりに人口過密な巨大スラムを抱える工業都市が姿をあらわす。コミュニティを奪われた大量の都市生活者は、頻発する公害や疫病による肉体的脅威や、飲酒・売春・児童労働などの社会悪等、生まれたばかりの近代資本主義がはらむ矛盾に直接さらされることになった。それゆえ、これを見かねた良心的人々によって様々な社会運動が始まり、産業社会に適合した教育・医療・福利厚生等の社会的諸機能がコミュニティから独立した社会制度として整備されていく…。

 19世紀後半(ビクトリア時代)、世界経済のトップに立ち「世界の工場、大英帝国」と呼ばれたイギリスは、産業社会がはらむ矛盾を後進国や植民地に転嫁することによって、国民的繁栄をおう歌することになるのだが、本書は、その繁栄を準備した産業革命(およびそれに先立つ商業革命)時代のイギリスにおける生活様式の激変をわかりやすく解説するすぐれた生活史。さらに言えば、この変化はイギリスだけの話ではなく、その後世界各地で繰り返され、いま現在も続いている前近代から近代資本主義社会への移行プロセスのプロトタイプでもあったことを教えてくれる。
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