収録作は以下。
短篇・『青木ヶ原』
掌編集・『わが人生の時の生と死』
連作掌編・『ブラック・リング』
掌編集・『生死刻々』
短篇・『生き残りの水兵』
死者との邂逅を描く短篇『青木ヶ原』冒頭は文藝春秋サイトにて試読可能。
著者の最高水準というわけではないが、興味のある方は是非。
続く『わが人生の時の生と死』は、
実質『わが人生の時の時』『〜時の会話』から連なる掌編集の続編。
(『わが人生の時の人々』は聞き書き+短篇の為除外)
私感では特に掌編で世界最高峰の資質を示す著者だが、
『キジムナーは必ず来る』『傭兵になった男』『幻覚』といった歴代屈指の名編が並ぶ。
わけても動物園の飼育係と獣を題に取った『ライオンと若い女』を著者のベストに推したい。
『エベレスト』はモデルとなった野口健自身による書評もあるので参考までに。
『ブラック・リング』は佳作。
包丁の購入に始まる犯罪が次々に綾を成していく。
『生死刻々』は文字通り生と死を中核に据えた掌編集。
ここでは『おみくじ』『サイパン』『海での出会い』といった粒が揃う。
末尾の掌編『異郷にて』はタイトルからしてヘミングウェイを意識しているが、
異国の地での死刑と人身売買の目撃、それについての畏敬と悪びれ無さがいい。
『生き残りの水兵』は復讐劇。
先の大戦で生き残った水兵たちを襲い、
また生き残りが襲わざるをえなかった何者かを描破する。
読み易さ、また濃密さを鑑みて、後期石原慎太郎の入門に最適。
気に入った方は最新長篇『火の島』も是非。