本書のタイトルのとおり、生態学を志す人向けで、事例もすべて生態学的事象が扱われている。特に実際に生態学でよく使う解析にベイズを応用するとどういう考え方になるのか、がフリーのプログラムも提示しながら説明されており、これからベイズを使おうとする人に役立つようになっている。ベイズ統計がわかりづらい理由として通常教わる頻度論的統計の考え方に慣れ過ぎてしまっているというのがある。頻度論で仮説採択の根拠として使われるP値が仮説の正しさの確率を表現するものでなく、ベイズ統計学はまさにその仮説の確からしさを表現するための方法であることが理解できれば、ベイズの考え方は半分以上わかったも同然であり、あとは単なる計算技術上の問題といってもいいくらいである。仮説の確からしさ、いわゆる事後確率を表現するため、事前情報を組み込むというのはベイズ統計の大きな特徴であるが、その根拠としてベイズの定理を用いることから自然に生じるものにすぎないし、またなぜそうしなければ仮説の確からしさが表現できないのか、も具体例をとおしてわかるようになっている。本書の前半の章はそうしたベイズ統計を理解するためのカギになる部分に説明が割かれており、少なくとも日本語で読める本でそうしたことを意識して説明している本はこれまでなかったと思う。ただその説明の順序なりが、もう少し体系的にうまく整理できたのではないか、と思える。そういう意味ではこれまでまったくベイズ関連の本をみたことがない人が手に取ると評価のわかれるところかもしれない。ベイズ統計を勉強するのにいくつか本をみてみたけど、いまいちよくわからない、という人にはターニングポイントになるような本ではないだろうか。