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生命世界の非対称性―自然はなぜアンバランスが好きか (中公新書)
 
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生命世界の非対称性―自然はなぜアンバランスが好きか (中公新書) [新書]

黒田 玲子
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

地球上の動物は、外観上、おおむね左右のバランスがとれているが、それをアミノ酸や核酸といった分子のレヴェルで見ると、そのバランスは完全に崩れているのである。このアンバランスは、身近なこととしては薬の効果や食物の味・香りの違いなどに現われ、一方、生命の起源や宇宙の非対称といった、より根元的な問題を解く鍵をも握っている。本書は、生命体だけが持つ、この非対称性が何に由来しているかを探る壮大な試みである。

登録情報

  • 新書: 216ページ
  • 出版社: 中央公論社 (1992/10)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4121010973
  • ISBN-13: 978-4121010971
  • 発売日: 1992/10
  • 商品の寸法: 17.4 x 11 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By wave115 VINE™ メンバー
形式:新書
「対称」という概念の説明に始まって,生命誕生の神秘に迫る非常に奥の深い1冊です.

「対称」というと学校で習ったのは線対称と点対称くらいで,それ以外の「対称」があるという事は全く考えてもみませんでした.しかし少し概念を広げてみると,その他にもいろいろな対称があるとのことです.例えば,「回映」という対称操作は初めて知りました.

本書では,まずこの「対称」という概念の説明から始まります.そして,動植物を対称という観点から見るとどうであるかという話になります.分かりやすいのは動物の話で,概ね左右対称ですね.しかし,この外見に反して,動植物を構成している分子レベルでは全くの非対称であるようです.非対称ということは,右手型の分子と左手型の分子があるということです.そして,この片方が選ばれているわけですが,生命誕生の過程でどのようにして片方の型が選ばれたかという議論は非常に興味深いものでした.

後半の化学式の出てくるところは素人には若干敷居が高いですが,その部分をすっ飛ばしても著者の言いたいことはよく分かります.サイエンスの好きな方にはお勧めです.
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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書
 対称性という観点から見た生命科学の本。

 その内容は、マクロ(生物の外見)からミクロ(分子)まで幅広く話題

を取り揃えてあり、さらには素粒子から生命の誕生まで広がっていく。

まさに、知的興奮に満ちた内容である。

 冒頭で一般になじみのない対称性について詳しく説明してくれている

し、時に難解になりがちな分子生物学に関する内容も平易な文章で書か

れているため、生命科学をまったく知らない人でも理解できる内容にな

っていると思う。当然、生命科学をかじった者でも、十分楽しめるだけ

の刺激的な内容である。
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形式:新書
 2008年のノーベル物理学賞は、南部陽一郎、益川敏英、小林誠の三氏が受賞した。受賞理由は、いずれもパリティ非保存に関係する業績である。南部の理論は、一足先にノーベル物理学賞を受賞したワインバーグ等の理論にも影響を与えているらしい。南部や小林のブルーバックスが大急ぎで平積みにされていたが、手に取ってページをめくってみることはあっても、誰も買わないだろう。実際、売れていなかった気がする。

 ちょうどそんな時期に読んだ。第一章の序論に続いて、第二章では対称についての数学的な説明、第三章ではマクロの生物界の対称性、第五章では分子レベルでの非対称性、第七章では原子・素粒子レベルでの非対称性について、わかりやすく説明されている。第四章と第六章は、やや独立した付論である。第二章はやや難しい。

 対象を変化させた時に、その前後で対象の状態に区別がつかないような操作を、対称操作という(P.21)。もっとも分かりやすいのは鏡映で、鏡に映した時に実像と鏡像の区別が付かない場合のことで、その対象は鏡面対称という対称要素をもつ、と表現する。いわゆる左右対称のことで、例えば人間の体がそうである。対称操作と対称要素は抱き合わせで一義的に決まる。この他にも、回転、反転、回映、螺旋、映進などの対称操作がある(P.40)。対称操作とは数学で言う行列・写像のことなのだろうな、とは思うが、レヴィ=ストロースに読ませたかった。

 生物は進化の過程で、球対称から回転対称を経て左右対称へと、対称性を発展させていったが(P.79)、こうしてできた動物や植物の構造は、種々の対称性を持つようになった(P.60-62)。これがマクロの世界である。しかし一方、ミクロの世界になると対称性は崩れてしまい、非対称なアンバランスの世界である(P.116)。すなわち、アミノ酸や(デオキシ)リボースは、いずれも不斉炭素をもつキラルな物質であるが(P.124, 132)、生体中のアミノ酸はすべてL-体で(P. 146)、(デオキシ)リボースはD体であることがわかっている(P.125)。これはどうしてだろうか、と。キラリティが生じてしまったことと、一方のエナンチオマーに決まったことの根拠は何なのか。

 筆者は素粒子レベルに話を掘り下げる。素粒子間にはZ相互作用とよばれる弱中性カレントが働いているために、電子はわずかに右巻き螺旋の軌道をとっているが(P.190, 191)、このためL-アミノ酸の方がD-アミノ酸よりもわずかに安定なはずで、理論的にはD-アミノ酸よりも10-17だけ多くなってよい(P.192)。もちろん、あまりにもわずかな差であるため、これでは現実のホモキラリティーの説明にはならない。L-体のキラリティが成立したことに必然性があったとしても、それが増幅される過程が是非とも必要になるが(P.193)、たった十万年で、すべてのアミノ酸がL-アミノ酸になる確立が98%であるという理論値も得られている(P.195)。すなわち、ある種の素粒子間相互作用のために宇宙は本質的に非対称であり(P.185)、この小さな差が生物界のホモキラリティーを説明しうる(P.212)、というのである。だから、非対称的にできている現実界のネガ(エナンチオマー)は、あり得べくもない、ということになる。ちなみに、(デオキシ)リボースのキラリティについてはどうなんだろうか。

 もちろん、筆者自ら、「生命の分子から生命の誕生までのギャップは大きい」(P.212)、と言うように、非対称性なミクロの分子を積み上げていって、どうやったら対称的なマクロの世界につながるのか、また、どこで非対称性を乗り越えて対称性に相貌を変化させているのか、については結局分からず終いだった。フラクタクルが崩れているということであろうが、これはそんなに不思議なことではないような気もする。右手型を模した小さなアイコンを使って左手を描いて、これを遠くから離れて眺めれば、それは左手に見えるだろう。要するに、充分小さな単位の集まりを、充分遠くから観察すれば、もとの単位の原型が問われることはなくなる。これは日常的な感覚において腑に落ちる話である。

 著者はその後、対称性についての続編は展開していないようである。マクロの世界における対称性について、たしかに人間の体は形態的にはアキラルであるが、利き手と逆手を持っているように、機能的にはキラルである。本書のサブタイトルは、「自然はなぜアンバランスが好きか」、とあるが、人が好むのはむしろ左右対称性であることが多い。これはどうしてなのか。あるいは、右翼と言い左翼と言う時の右左は、どういうイメージなのか。“right”は“正しい”という意味も持っているが、“left”には“価値のない”という意味も込められているらしい。右大臣と左大臣はどうだろう。左右対称とは言うものの、どうやら左と右はそもそも鏡面対称ではないらしい。

 いずれにせよ、文系、理系を問わず、広く読まれて欲しい。
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