40億年近くの時間をかけて現在まで連綿と続いている進化のプロセスで、著者がもっとも画期的だと考える「十大発明」について、それぞれ一章を当てて解説し、考察を展開した読み物。しかし、平凡で通俗的な内容ではなく、随所で読者の目を開かせ、啓発してくれる優れた本だ。例えば、生命の誕生(1章)、DNAの誕生(2章)についても、最新の研究を紹介しつつ、通俗本では味わえないスリリングな感触を与えてくれる。
評者にとってとりわけ刺激的だったのは、前半部では、「夢のエネルギー供給源」ともなりうる光合成の起源(3章)、われわれ人間を構成するような「複雑な細胞」を持つ、真核細胞生物の起源(4章)など。葉緑素を媒介とする光合成がなければ、酸素の豊かな「青い」地球はありえず、植物界での莫大なエネルギーの蓄積もありえなかったのだ。また、複雑な内部構造を持つ真核細胞なくしては、様々な形に進化していく高度な生き物の世界はありえなかった。
後半にはいると、筋肉による運動のメカニズムや視覚の起源、温血性の起源と特質など、やはり興味深い話題が取り扱われていくが、9章の「意識」の問題は、問題自体の難しさもあって、やや散漫な印象を与える。最後の10章、「死」の問題は、老化を防ぐためには、進化生物学の知見が不可欠だという見解が述べられて興味深い。カロリー制限がなぜ長寿に関係するか、あるいは、日本人学者の研究成果として、ミトコンドリアDNAに見られる変異が老年性疾患のリスクを半減させること、などが紹介されている。全体として、読めば十分な手応えのある好著だと見受けた。