日本のSEは気の毒である。悪名高い建設業に倣った元請−下請体制、ろくに教育もせずに発注先に放り出す請負という名の偽装派遣。日本の情報産業をこういう体質に作り上げてきたのは、バブルに浮かれた経営者と経産省だということを思い出して欲しい。
そうした結果が、元請の半値以下でも、下請け開発を受けざるを得ない中小システムハウスなのである。本書の著者は、このあたりの事情を、どのように考えているのだろうか。
1970年代には憧れだったSEという職種が、いまや3K職業の典型といわれるようになっている。しかもこのような現象が日本だけ、という現実に目を向けるべきだ。
SEは技術者である。勿論、「蛸壺技術者」はもってのほかだが、情報を含めた全ての分野の技術者が本来、目指すべきはプロフェッショナル(専門性)である。技術者は、まず自らの技術力を磨くことが当り前だ。
本書で「ビジネス・エンジニア」という聴きなれないことばに接したが、エンジニアが技術者としての倫理の存在をそっちのけに、利益最優先でガメくる仕事をすれば、発注側は何を信じて発注すればよいのだろうか。
まず「技術者は良心に照らして恥ずかしくない仕事をすべき」であって、そうした技術者を育成し、かつ活力ある企業に育て上げるのは、経営者の本来目標であろう。
経済合理性のみが強調される、現在のビジネス体系をリエンジニアリングし、調和の取れた健全な経済環境にしていくのは、まさに経営層の諸氏の役割だ。
この意味で本書は、ビジネスとエンジニアリングを混同している、としか思えない主張である。