フェミニズム、そして戦後思想そのものを問い返すのが本書だ。今話題のナショナリズム、国民国家の問題についてシャープに切り込んでいく。戦争だけでなく暴力そのもの、永田洋子のように革命そのものについてもジェンダーという視点との比較を通して分析していく。巷のナショナリズム本よりはるかに質が高く、是非ご一読をすすめたい。
ただ途中の女性史研究者鈴木氏への批判はいただけない。鈴木氏が女性の戦争参加説を多いかのように書いているとして、実際はそれへの批判の方が多いと上野氏は述べる。その後鈴木氏の態度への批判へと論考が長く進められていくのだが、その量の大小に関して論拠がないのだ。鈴木氏に対して論拠がないといいながら、そも論拠がないことから始められるというのはどうにも奇妙だ。その後の批判に読者は目を奪われがちであろうが、是非鈴木氏の論考と読み比べて真偽を判断していただきたい。