高校時代、(当時の文部省推薦による)課題図書一覧の中から何冊か選び感想文を書くという宿題を課されたことがあった。
私は、ヘッセの「車輪の下」を読んだ。
そして、クソ真面目に読んで、クソ真面目な感想文を書いた。書いた方もつまらなかったが、読んだ方もつまらなかったにちがいない。
「勉強して優等生でいなければならなかった少年ハンスが、そのプレッシャー(車輪)に押され自殺してしまう」というストーリーだったという記憶だけが残った。
社会人として生きている今、同じサラリーマンである伊藤氏が、庶民的な言葉遣いですばらしい文学解説書を書いてくれた。文学書には見えないくらい自然な言葉遣いだが、読み方に好感がもてる。こんな読み方をしていれば、高校時代の読書感想文ももっと楽しんで書けたことだろう。
一部を引用する。
引用してしまうのは著者に申し訳ないが、古典と同様、「たとえ結末を知ったからといって、読後の感動がうすれてしまうような、やわな(P.7)」本ではないと思う。
【P.50〜P.51】
・・・・・だってこれからじゃないか、ハンスは。(… 中略 …)まだ、キスしていないし、酒だって覚えたばかりだし、自分の生活など始まってすらいない。職人になってもいいし、別の生き方を見つけてもいい。エンマ(←恋した女性)にふられたことだって、飲み屋で笑い話にできる日がくるし、(… 中略 …)それなりの幸福を実感しながら生きていける日がくるはずだった。(… 中略 …)
そして、「俺、むかしは天才児とか言われて、神学校まで行ったんだぜ。すぐにやめさせられたけど。あっはっは」と笑いながらビールを飲んで、そのままカウンターにつっぷして寝てしまうような、のんきな男になることもできたはずなのだ。 そんなハンスが見られなかったのは、とても残念なことである。