この本の最後のひとつ前のページに、おもしろい記述がある。
「井の中の蛙大海を知らず」ということわざには続きがある、というのだ。それは
「天の深さを知る」だそうだ。
いい言葉である。
引きこもりで苦しむ人にかけてあげたい。
この箇所は、本書全体の要約とも感じられる。
わけのわからないこの世界に生きる人間のひとりひとりを見ると
井の中の蛙(かわず)のようなものと考えられる。
蛙は限定された水中で、からだをあちこちにぶつけ、
もがき続けて一生を終える定めである。
人間も似たようなものだ。
しかし、ふと仰ぐ空の底知れぬ深さを感じる瞬間は
誰にも平等に訪れるだろう。
その人が自分にふりかかった災難を
ただ不幸と感じて打ちのめされてしまわない限りは。
本書は実に平易な語り口ながら
著者の経験と知識とが絶妙に統合され、
文字通り「生きる力」を賦活する魅力に富んでいる。