全盲ろうの東大教授・福島氏のエッセイ集。視覚・聴覚を失った幼少期から長じて結婚・東大教授になるまでのさまざまなエピソード。「健常人から見ると驚異的なストーリー」と書くのは簡単、でも筆者の豊かな感性と「余裕」の筆致で紡がれた文章を読み進めるうちに、見えること・聞こえることの意味、というか自分に見えているもの・聞こえているものの意味合いをひたすら考えさせられた。
筆者は高名な政治家に会ったとしても大して緊張はしないが、「生きる支えになった」小松左京氏と会った時は心底緊張し、感動したと言う。小松氏も今まで小説を書いてきてこんなに嬉しかったことは無いと滂沱の涙。同じく小松氏の大ファンとしてこのシーンは泣けたけれど、福島氏は大好きなSF小説になぞらえて自分の境遇を「宇宙人」「バルタン星人」「E.T.」とおどけてみせるが、では視覚・聴覚が「備わる」我々地球人は福島氏より多くの情報を得、より豊かな人生を送っていると言えるのだろうか。
氏は自らを「特別な存在だ」と思い、「果たすべきある種の役割を与えられている」と考える。最後まで読むとこの本のタイトルの意味が読む者に染み入ってくる。人はみな孤独で誰かの手を求めながら暗黒の宇宙を旅している。超一級の語り部が編んだ人生・人への愛の書。