広中平祐氏(1931-)は、日本が誇る数学者の一人である。(数々の賞を受賞しており、
「数学のノーベル賞」と呼ばれるフィールズ賞も受賞している。)
本書は、若者(高校生から大学生程度)を対象にして書かれた「自伝」および「人生論」。
非常に平淡な語り口で、さらりと読むことができる。
自伝として:生い立ちからの半生を振り返り、様々な出来事が自分にどのように影響した
か、いろいろな場面で、自分がどのように考え行動したか、等を分析してゆく。
「偉人伝」として純粋に楽しめる。
人生論として:学者としての、そして、一般の人間としての人生論を語る。著者は自分は
天才ではないと主張するが(ただし、努力については誰にも負けないとの自負も見せる)、
才能と業績、経歴において、極めて特殊な人生を送っている。しかし、そこから出てくる
人生論が、一般にも適用できる点はおもしろい。これは、考えがしばしば非常に仏教的な
ものに落ち着いている点(著者もなんども自分で指摘している)からもわかる。たとえば、
「素心」(偏見、おかしな先入観をもたないこと)を大切にすることや、「この世は『縁』
である」といった人生観の表明は、非常に仏教的であり、よっておそらく普遍的な主張と
なっている。
氏の主張は、タイトルの通りである。「生きること学ぶこと」。つまり、学ぶこと(文字
通り、学ぶこと、また、創造することによって、自分を発見する(学ぶ)こと)こそが
楽しみであり、それを追求するのが生きることである。大雑把に言うと、このような主張
であるが、もちろん詳しくは本書を読んでいただきたい。
人生をどう生きるかと考え始めた高校生ぐらいの年代の人にぜひ読んでほしい本である。
もちろん、年代を問わず、楽しめる/ためになる著作でもある。