「岸壁よおはよう」では15歳で始めた山登りから、無我夢中で、時には名を上げるためにやってきたクライミングへと進んで行き、この「生き抜くことは冒険だよ」ではヨーロッパの3大北壁単独登攀という極限を越える行動から得た哲学へと円熟されていきます。
「思考は恐怖をたくさんもっている。肉体的な苦痛も知っている。しかし、思考を越えた意識によって行動は起こされていた。」
「おまえは孤独なのか・・・」「・・・決して孤独ではないと思いあたった。むしろ都会の雑踏の中にいながら、自分自身を理解してくれない人に囲まれているほうが孤独だ。自己表現をする方法が見つからないほうが、はるかに孤独だ。私は孤独じゃない。ひとりでいるという物理的なことは越えられる、と思ったとき、5日目も終わろうとしていた。」
「・・・自分の身体と意識とが離れていくような状態がこの日に起こった。・・・動いている自分を別の空間から見ているような気がする。・・・後日、禅の僧侶にその話を伝えたら、その状態になるには、禅の修業をして三十年以上かかると言われた。」
最後の山ウルタンへは「今回の登山のテーマは調和です」と、何度もくり返していたようだ。
自然を心から愛した恒夫氏を失ったのは残念でならない。