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「花咲婆さんになりたい」という章がある。「私はいつでも、風呂から上がると、ちょっとの間、鏡の前に立って、自分の裸の体を見る。」と始まり、「私はもう、花咲婆さんになり切っている。」と結ぶ、ヒューモラスなその一章は、読むだけで気持ちに明かりがさしてくる。晩年の著者は、きっと、周りの人々を幸福な気分にさせる存在だったのだ、と想像する。
しかし、遠い昔彼女は、いとこでもあった最初の良人(おっと)を札幌の地に捨て、何も告げずに尾崎士郎のもとに去った。良人は暴力を振るったわけでも、別の女に走ったわけでもなく、おそらく善良な人であったろうに、彼に連絡を一切取らぬまま、彼女が北海道に戻ってくることはなかった。
一見、読んでいて楽しくなる書ではある。しかし、他人がどう思うか、を一切気にせず、自分の思うままに突っ走った彼女の生き方に思いを馳せるとき、その陰で傷ついた人も少なからずいたのではないか、と思い、少し複雑な気分だ。
こんな人生もあるんだなー、と膝から脱力してしまうような、
そんな本です。
何か大変なことがあった時、この本を読んだら「何てことないじゃん」と
言い切れてしまいそうな、それくらい、激烈な彼女の人生の本です。
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