いちおう「深沢七郎未発表作品集」と謳っていますが、正確に言うなら、著者の生前には活字にならずに埋もれていたインタビューを発掘して刊行したものが親本です。
かなり以前に、著者の雑誌インタビューの録音テープを編集者が持っているという噂を小耳にはさんだことがある。書誌データが明記されていないので、くわしい事情はわからないけれど、あるいは本書がそれなのかもしれない。時事問題や身辺のネタから推して、どうやら1970年代の中頃のものではないかしら。
とにかく、あっけらかんとした放言や猥談がとりとめもなくつづく。この奇人作家の熱心な読者ならば楽しめる内容です。手軽に読めます。
《オレには生きていることが青春だからね。死ぬまではずーっと青春の暇つぶしだね。
人生とは、何をしに生まれてきたのかなんてわからなくていい。三千年前に悟りを開いたお釈迦様は、“それは、わからない”と悟ったから悟りを開いたんだね。
…………
まあ、暇をつぶしながら、死ぬまではボーッと生きている。それがオレの人生の道、世渡り術というものだよ。》
深沢作品のコンプリートをめざすひとにはおすすめ。ただし、手始めになにか一冊読んでみようかなという向きには、普通に『楢山節考』(新潮文庫)か『言わなければよかったのに日記』 (中公文庫)といった代表作から読んでいくのが無難だろう。私はそう思います。