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読む前は「生きがい」という言葉はあまりぴんと来ないものだった。
自分は「こういう生きがいがあります」と胸を張って言える状態でもないけれど、
かと言って、生きがいがなく暗い人生を歩んでいるわけでもないから。しかしこの本の
「生きがい喪失者の心の世界」を読むうち、これに当てはまる状態だった一年間があった
ということに思い当たった。世界から見事なほど色が消えていた時期が自分にもあった。
「生きがい」という言葉から現代の日本人はどうしても人生哲学的なものを
想像するのではないか。しかしこの本で扱っている「生きがい」はそのようなものではなく、
人間という存在について哲学的、精神医学的な目も含めて複合的な角度から
書いているものだ。感傷がなく、冷静だが、底には著者の暖かい血が感じられる。
読後は「生きがい」という言葉に対するイメージが大きく変わることだろう。
著者が精神科医として勤務していたらい病施設の人たちの生き方が多くの例と
して書かれているが、それらの多種多様な生き方を見ると、毎日の生活に追われて
精神面が意識の陰に隠れている自分たちの根底にある姿を見せつけられる気がする。
人はそれぞれ異なる心の世界を持っていること。自分がそのなかで最ものびのびできる世界を
作ろうと努力していること。人が苦しい経験をしたあと、人の心は深くなり、今までよりも
多くの角度から物事を見られるようになること。人間の生物としての生命力が精神を助けること。
精神化と社会化のバランスがとられその上で個をいつくしめる状態が愛のある状態であること、
など印象的。
たしかにこの本は素晴らしい本だと思う。が、生きがいを失いかけ、また立ち直って
生きた一番素晴らしい例はおそらく神谷美恵子自身なのではないか。
この人の本をもっと読みたいと思った。
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