日経新聞のHPによれば「2009年、4分冊で刊行した「甘苦上海」を全面改稿、まったく新しい物語に生まれ変わっています。」(http://www.nikkeibook.com/book_detail/17100/)とのこと。つまり、「甘苦上海1〜4」の「続編」ではなく「リメイク版」、いわば別物ということです。
高樹のぶ子氏のブログから、ご自身の言葉によれば、「「紅子さんの今日を追いかける」と決めることが出来たのは、「後日、その一年を俯瞰して定着する」という心づもりがあって、可能になりました。普遍性の付与であり、抽出作業であるかも知れません。」「うまく説明できませんが、完結版を書きたかった、書かないでは済まされなかった、ということです。」。
ところがこれは、新聞連載終了後の2009年11月15日(日)の日経新聞朝刊の文化欄に高樹のぶ子氏みずからが記した、「…それでもこの間、貴女の肩から離れずに記述し続ける事が出来たのは、経営者としてはともかく、女としては全く愚かな人間の視線を辿(たど)る面白さが、確かに在ったからです。神のように俯瞰(ふかん)して見下ろすより、苦し紛れに石ころを蹴(け)とばす貴女の、その足先の動きを見ているほうが、高揚できた。」「さようならです。寧波での貴女を、私はもう知りたくない。したたかに、我が儘(まま)に、欲望に正直に、そして時には愚かに可愛(かわい)く、異国で生きていってください。(以下略)」と矛盾しています。
読者を馬鹿にしていると感じるか。新しく『生まれ変わった』、(別物の)「甘苦上海」を楽しめると前向きに喜べるか。
人それぞれだと思いますが、私はこの小説も作家も上手いと思えませんし、本書に「完結版」というタイトルはふさわしくないと思います。
新聞連載時に多くの人をいらつかせたであろう、主人公が全く会社経営者に見えない点や、ビジネス描写があまりに弱い点、それぞれの人物の描写が軽薄(主人公の紅子しか人物が描ききれていない・他の登場人物はブレが多すぎてキャラクターが不明瞭)な点(それゆえ何故それぞれが魅かれるのか全く解らない)が改善されていれば、多少の意義があるかも知れません。