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甘美なる来世へ
 
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甘美なる来世へ [単行本]

T・R・ピアソン , 柴田 元幸
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

こんな小説、見たことないのに、なぜか、とても懐しい…アメリカ南部の田舎町、ニーリーで巻き起こる、笑いと脱線と戦慄の物語。柴田元幸の超絶技巧な名訳で。

内容(「MARC」データベースより)

こんな小説、見たことないのに、なぜかとても懐かしい…。アメリカ南部の田舎町、ニーリーで巻き起こる、笑いと脱線と戦慄の物語。とびきり魅力的な現代アメリカ作家ピアソンの作品、初の邦訳。

登録情報

  • 単行本: 399ページ
  • 出版社: みすず書房 (2003/11/26)
  • ISBN-10: 4622070693
  • ISBN-13: 978-4622070696
  • 発売日: 2003/11/26
  • 商品の寸法: 19 x 13.2 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 444,854位 (本のベストセラーを見る)
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形式:単行本
「それは私たちが禿のジーターを失くした夏だったが禿のジーターはジーターといってももはや大半ジーターではなく大半スロックモートンにたぶんなっているというか……」、邦訳冒頭29行に及ぶ改行句点読点なしの1センテンスをとにもかくにも乗り切ってしまえば、あとは甘美なる世界。難解な部分はまったくなし。どうでもよいこと無駄なことを徹底して省略しないという、文章の見た目とは正反対の厳格な拘束に自らを縛りつけた律儀な文章で、ニーリーという架空の田舎町のどこか間が抜けた人たちのどうでもよい日常が脱線に次ぐ脱線で描かれ、最後までクスクス下腹を痙攣させながら読みきってしまうこと間違いなしの奇作。

この無駄話でいっぱいの文章は、例えばハムレットの端役に焦点をあてた「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」のように無駄な人間などいないという意図のもとに書かれた作品を連想させたりもするし、饒舌と寡黙は同じコインの裏表と自ら証明したベケットの無表情な喜劇的小説を思わせたりもする。

だからと言って、ストーリーがまるでないわけではなく、まるで結末から逃げ出そうとするかのように脱線していく物語のその裏で、ボニー&クライドばりの悲喜劇が静かには進行していくのでした。

柴田元幸氏の名訳で、是非「上等な憂鬱」を味わって下さい。

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19 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
翻訳書のいかなる評においても、翻訳の巧拙を話題にするのは的はずれであると僕は考えている。訳者が目指すのは自身の存在をできるだけ読者に感じさせぬことであり、作品が「面白い」と思っているからこそ訳しているのであるからして、やはり評の対象は作品であるべきなのである。しかし、『甘美なる来世へ』のレビューでは僕自身のこのルールを破ろうと思う。それほどに訳者柴田元幸の訳は素晴らしいのだ。

翻訳という「プロセス」がそこに介在したことは微塵も感じさせない。『甘美なる来世へ』の最大の特徴となっている語り口が、日本語でも違和感なく味わえる見事な訳である。

読み終えてみると『甘美なる来世へ』は僕らをどこにも連れていかないし、いかなる教えもそこにはない。脱線に次ぐ脱線で本線の話はいったい何だったのか忘れそうになるとき、思い出したように本線に戻っていく。かといって退屈だとか散漫すぎて要点がつかめないとか、面白くないとかいったことはけっしてない。

それどころかその脱線の語り口の絶妙さに時間も本線のことも忘れて没入してしまうのである。ピアソンの小説においては脱線こそが命である、とさえ言えるかもしれない。

本書はある青年が引き起こした凶悪な事件をめぐる物語である。舞台となっているニーリーという街の住人たちが、この事件や犯人について語るときの素朴さ、滑稽さ、そして、優しさが柴田訳からひしひしと感じられるのだ。その魅力ゆえに、読者は笑みを浮かべて本書を読みながら、そして読み終えたときに、心が温かくなっていることに気付くのである。

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