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そして次に、皮肉なことに早々に軍人の道を外れた甘粕こそが、昭和期を通じて、陸軍の最も理想的な軍人の一人であったという事実。
強い愛国心と天皇への忠誠心、規律を遵守する強い意志、目的達成のために慣習に囚われない合理的思考、組織を統率するための強いリーダーシップと部下へ優しさや人情味、人脈作りと情報収集能力、どれをとっても並の軍人には及ばない実力を、甘粕は満州で発揮した。
本書は甘粕の裏面(諜報活動や阿片取引など)について詳しくは述べてはいないが、甘粕が表社会でも裏社会でも人望を得た背景にある複雑な人間的魅力を、著者は丹念に説明している。
同時に、表紙の写真が、澄み切った強い意思と冷酷さ、大いなる諦念が共存している甘粕の魅力を物語っている。
多くの伝記作家とは違って創作や類推を極力排除したスタイルは、甘粕本人の人生の闇の部分に光を当てはしない。しかし、見えない部分があるからこそ逆に、甘粕像がくっきりとした輪郭を持って浮き上がってくるのだとは言えないだろうか?読了と同時に独特の読後感が残る佳作である。
前大戦前後に興味を持つすべての人に読んでいただきたい作品である。
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