官能小説にはしたくなかったのでしょう。ひたすら縛り、鞭打ち、ローソク垂らしのオンパレードです。SMとして何の目新しさもないし、起こる事件もごく常識的でした。
それでも達者な文章なら読ませるのでしょうが、一人称で始まるにもかかわらず、回想シーンで別人の一人称に変わるという離れ業(!)をやってくれてます。
プロだからなんでもありかもしれませんが、あえて禁じ手を使ってそれなりの文章効果があったとも思えません。
また無駄に登場人物が多く、入院中の母は何の関係もないし、スポーツジムで声を掛けてきた男もそれっきりです。
何か秘密があるのかと期待した医院長の息子は、本当にただのいい人だし……ホラーとして、人間の狂気というものをまったく感じない、退屈な小説でした。
仮にもこれがホラーだというなら、医院長の息子もSMクラブの会員だったとか、(最後の客はこの息子がベストでしょう)、主人公の女性は不妊治療の医師でありながら、妊娠に至らなかった患者を診て、そっとほくそ笑んでいたとか、もっと「何か」あった方がいいです。それとも、官能小説として思いつく限りの陵辱があるとか。
だらだら長い物語であった分、失望も大きかったです。