「東日本大震災」については、既に様々な復興計画や防災対策などが提起あるいは提案されている。そうした中にあって、一際目を引くのが“スピード出版”されたこの新書だ。著者の宮脇昭・横浜国立大学名誉教授は、「潜在自然植生に基づく、いのちを護るふるさとの樹木によるふるさとの森づくりを提唱し、国内外で1700ヵ所4000万本の植樹を行った植物生態学者」である。その宮脇先生が主唱されているのが、この度の「東日本大震災」を踏まえ、被災地域の南北300kmにわたる「森の防波堤」、さらに日本列島3000kmに及ぶ「森の長城」という壮大なプロジェクトだ。
この「いのちを守る森の防波堤構想」の要諦となるのが「潜在自然植生」であり、もう一点が「瓦礫」である。まず、大震災で発生した「瓦礫」について、宮脇先生は「いのちの森づくり」に係る「マウンド(土累)形成の材料として積極的に使い切るべき」と述べておられる。廃棄物処理の法的規制等はさておき、瓦礫から環境に有害かつ動植物に有毒な物質を除去し、有効利用を図る、という発想自体に、私も異議はない。だが、悩ましいのは、福島第一原発の過酷事故による放射能汚染である。この制約が解消されない限り、瓦礫の有効活用は難しいのではないだろうか…。
「汚染瓦礫」の問題はひとまず措いて、「森の防波堤」構想における最大のポイントは「原植生」「現存植生」に次ぐ、余り聞き慣れない「潜在自然植生」という第三の概念である。これこそ宮脇先生の研究活動のキーとなるコンセプトだ。この概念を簡単に言えば、「もし今人間の影響をすべてストップしたときに、そこの自然環境の総和が支え得る終局的な緑、土地本来の植生」となる。具体的に、土地本来の残存自然植生を現しているものとしては、例えば「
鎮守の森」などがある。従って、「森の防波堤」などを築くに当たっては、樹木であれば何でも良い、ということにはならない。
「東北地方太平洋沖地震」において、「深根性、直根性の(常緑広葉樹である)タブノキ、シイ、カシ類などを主木とする、土地本来の潜在自然植生に基づく本物の森は、それに耐えられた」。この点は、確かに立証されている(新日鐵釜石等)。宮脇先生は、日本で初めて「潜在自然植生調査」を行い、「土地本来の樹種を主木としてポット苗を植える『宮脇方式』と呼ばれる植樹法」も開発されている。土地本来の潜在自然植生に基づく多層群落の森は、防災や防潮、環境保全等といった役割を立派に果たすのではないか。《3.11》から1年…。いのちを守る、本物の「森づくり」を始めよう!