2011年4月放映のNHK教育「こころの時代」・『瓦礫の中から言葉を』の内容をベースにしつつも、大幅に加筆されている。
3.11以後を著者がどのように語るかと待っていたが、ピタリと止まった著作活動をいぶかしく思っていた。詩集「眼の海」の執
筆にあたって、ひどい抑うつにおちいり、夏をぼうにふったと後書きで述べている。この本はそのあとに書き上げられた。これ
までの著書と比較すると、初出なのに文庫本であり、かつ粗い印象があるのはそのせいかと思った。
本書でも語られているのは、「言葉」について。震災後に世の中を覆った「言葉」を詳細に検討しつつ、その得体の知れない気
味悪さについて語っている。
若い記者とのやりとりに触れて、筆者は「言葉がもっとも相手によく届くのは聞き手と語り手が全くの個であるときだけ」とし
て、大震災後の言葉の名状しがたい気味悪さを「言葉が集団化したから」としている。
この前、市長になった男の言葉もまた、集団化しているからだろうか。とても気味が悪く、そして世間受けが良い。