車掌の英(はなぶさ)さんは、クールでソツなく気も利くんだけど、客は初めてでも常連でも
同じ“お客さん”と言い切り態度は変えず、それでいながら決して冷徹でなく、
ただひたすらに“車掌”という職務に忠実な青年車掌さん。
そんな英さんには『英さんの列車に乗った人は幸せになる』とかいう逸話が有り、
しかもそんな事は本人つゆ知らずなワケであるのだが、どうやら事実らしいとか。
長距離を走る旅行列車ではなく、都市内環状線の車掌さんを主役に立てた話で、
その列車に乗り合わせただけの人が、英さんとちょっと関わりあった人たちが、
何だかちょっと、幸せな展開を迎えるというほのぼの系ヒューマンスクランブル。
しかも英さんは余り与り知らず(w。1巻完結。
話は結構巧妙で、良く有る人情話かと思ったら2〜3の話がパズルのように組み上がってみたり、
予想展開をクリッと引っ繰り返してみたりと飽きさせない。ブワーッと泣いたり感動できる
ほどではないけれど、なんだかホッとする。
個人的に特に印象に残ったのは3話の幼少期、世界を渡り歩く同年代の少年との話で、
世界の広さを感じながら、それでも留まる事を決めた所。
それは決して世界に対する否定でも拒絶でもなく、ただ、そこに留まっている事でも、
広い世界に関わっているのだと思ったということ。
良く「見聞を広めるために様々な所へ、様々な経験を」という話が有ったりするが、
これって一面を捉えた見方でしかないわけで、例えば動く事を決めた人は、留まった事での
経験はしないわけで、結局のところどちらを選択するかだけの事であり、どちらが良いとか
優劣のある話ではなく、要はその選択した先にどれだけ真摯に向き合い蓄積できるかだと思う。
何かに留まり、時折不意にこのままで良いのだろうかとか不安になり、
何かしないといけないんじゃないか、変化が無いと良くないんじゃないだろうか。
そんな気がした時など読んでみたりすると、ちょっと安心できたり、
逆に踏ん切りつけられたりするかもしれない。そんな不思議な読後感のマンガでした。
店頭で表紙決めの衝動買いとかした割りには、久々に当たりクジ引いた気分。