真性の自然環境論です。
生まれてから自然の中で育ったナチュラリストによる、三浦半島の一角にある小網代(こあじろ)という希少流域をめぐる対談です。環境論には観念的な本も多いので、地に足がついた、本書のような本は貴重です。語られている内容が歳月をかけたものなので、大変味わい深い。
協力し合って、小網代のアカテガニの産卵が、7月〜8月、日没から25分±30分であることをつきとめ、訪問者たちに「ちょっと待ってください、しばらく水辺の陸地をカニの時間帯としてあげましょう」「あと7分すれば産卵にやってきますから」と。産卵の光景を見た人々は感動して、小網代の自然を保全する支持者になり、やがて行政の長も動かされ、長洲クジラさんは「守る手立てはまだ何もないが、とにかく守ろうと」と宣言されたという。責任ある立場の人の腹を括った決断の意味は大きい。
岸さんが引用された、ウイリアム・ドゥルーリーの「保全は、その地域のことをいちばん良く知っているナチュラリストのいうとおりやれ」は印象的です。
養老さんの「自然とは解である」は、養老定理と呼ぶべきもので、ノーベル賞をとられた先生方が、子供の頃に自然の中で育てられていることは偶然ではないようです。「子供たちが自然を見ながら育つということは、その解を見ながら育つということです。知らず知らずに、自然の中の複雑な問題に関する答えを絶えず見ながら育つということですね」と。教育に携わっている方々にとっても有益な示唆でしょう。
竹村さんの「現在、農業で用いる肥料に必要不可欠なリン鉱石が、枯渇しつつあります、そろそろ下水の糞尿からリンをとるシステムを作らなければいけない」も、将来を見据えた助言です。
編集者も、大切なことをしっかり伝える本にしようとされたことが感じられます。