昭和モダニズム期を代表する女性作家の一人、尾崎翠の光と闇が、ようやく真価を問われようとしている。
映画をこよなく愛した尾崎翠の、生前未刊行シナリオ「琉璃玉の耳輪」。
セクシュアリティの多様性、エロスとタナトスを追求した問題作が、緻密な読みと詳細な考証と、そうして津原泰水ならではの重層的なトリックによって、現代文学として甦生した。
オトメのアイドルとして君臨する尾崎翠を、ここまで読みこみ、書きこむ男性作家の登場は、それ自体が事件である。
心の広いオトメらは、(花田清輝によってミューズとたたえられた尾崎翠もまた)こういう時代がやってくる日を待ちわびていたのではないだろうか。
装丁もすばらしい。
最新の研究成果と照らし合わせても、小説「琉璃玉の耳輪」の功績と問題提起は、尾崎翠読者にとって避けて通れないものがあると考えられる。
尾崎翠 砂丘の彼方へ